2012/09/29

椎名勇仁による滞在成果発表会 開催


明倫AIR2012 part2体感する作品展

『かぐわしき世界 The Scentful World
 2012.9.29 sat ー 10.8 mon/holiday
PM1:00~PM8:00※最終日はPM6:00まで開館しています。
会場:活動準備室ぼうし(鳥取県倉吉市鍛冶町1丁目2825-1)入場料:無料


ここ掘れワンワン。犬のように歩く。
 明倫AIR2012、二人目の招聘アーティスト椎名勇仁さん。彼は自身を取り巻く環境の中で存在する可塑的なものごとを、まるで男の子の描くファンタジーのような世界を通して作品にしています。2010年から現在は、頭部が十二支の十二神将を彫刻作品として制作しています。
 夏の暑さが残るころ、椎名さんが倉吉市明倫地区にやってきました。当初は、制作途中にある『十二神将(戌)』を制作する予定でした。しかし、滞在が始まってからまるで犬になったかのように、山陰柴犬(山陰でしか生息していない猟犬)に会いにいったり、まちで採れる粘土を探したり、打吹山や三徳山に登ったり、仏師を訪ねたり、漫画を読んだりと、まちに潜む「におうもの(興味深いもの)」を嗅ぎわけながら、このまちで過ごしてきました。
 本作品展では、このまちで彼が発掘した生活文化や地域資源・歴史などを独自の世界観を通して作品にしています。彼がここで何を発掘して何を感じていたのか、においをかぐようにご鑑賞ください。


明倫AIR2012招聘アーティスト 椎名 勇仁(しいな たけひと)
美術家。主に自然との関係性や民俗学的な主題を通して、物事の可塑的な側面に焦点を当てたプロジェクトを行う。目撃者の証言を集積し、21世紀の河童像を作る「Kappa Complex」や、自身の身体に植物の種を植え付け、その生長観察日誌を発表する「フォトシンセサイザーズ・ジャーナル」などがある。http://shiinatakehito.com/

[作品プログラム]
展示作品『倉吉の粘土で照明具と香炉をつくってみました』
展示作品『十二神将(戌)』
体験コーナー『倉吉産の粘土に触れてみよう』

[関連イベント]
2012.9.30 sun pm5:00-7:00
会場:活動準備室ぼうし 参加費:無料(予約不要)
第3回 明倫AIR学校『アーティストによる滞在成果発表』
明倫地区で滞在したことによって、アーティストが気づいたこと、発見した事などを作品紹介を通してお話します。

2012.10.6 sat am9:00-
アートパフォーマンス『火山焼ー大山にて』
国内外にある活火山からのマグマ熱を用いて素焼き・焼成し、彫刻をつくってきた椎名さん。鳥取県にある大山(人間による記録的には死火山ですが)に登って、彫刻作品を設置します。
集合場所:大山登山口(詳細は予約完了時にお伝えします。)
参加費:無料、予約制(定員5名まで)
※登山中・移動中の事故については責任を負いかねます。十分な登山装備の上でご参加ください。

2012.10.8 mon / holiday pm4:00-6:00 
会場:活動準備室ぼうし 参加費:無料(予約不要)
最終回 明倫AIR学校
『2012→2013〜いろんな視点からAIRの可能性について言葉にする〜』
関わってくれたアーティスト・まちの人・サポーター・つなぎ手、みんなで明倫AIR2012を振り返り、それぞれの視点から明倫AIRについて、言いたい放題話し合います。

コメンテーター:椎名勇仁(明倫AIR2012招へい作家)、林 曉甫(NPO法人BEPPU PROJECT)、明倫AIRプロジェクトメンバーたち 他
司会:蛇谷りえ(明倫AIR2012ディレクター)


2012.10.8 mon / holiday pm6:30-9:00
会場:活動準備室ぼうし 参加費:1000円(飲食代)
クロージングパーティ『ありがとう、お疲れさま、また会いましょう!』
いよいよ今年の明倫AIRが終わっちゃう!まちの人も、サポートしてくれた人も、明倫に初めてやってきた人もみんなで盛大に祝杯をしましょう。

同時開催!アートを通じた、まちと明倫小学校の連携プロジェクト
こどもたちによる作品展『土ねんどで生き物をつくろう』
全学年のこどもたちが、椎名さんから土ねんど制作の技術や魅力などを学び、自分自身の作品をつくり制作しました。まちの方々のご協力によって焼き上げ、およそ150個のひとつひとつ個性あふれる土ねんど作品が完成しました。

かぐわしき世界に協力いただいた皆様:
上神焼 中森伯雅、赤瓦十一号館陶芸館、倉吉博物館 他。

2012/09/26

展覧会のつくり方〜その2(9/26)

こどもたちの作品が焼き終えて、展示空間の構成が決まり、地域の大工さんたちと打ち合わせをした後、椎名さんが「僕もいい作品を作らないと」と十二神将の制作に夜おそくまで取りかかります。こどもたちの作品も、展示空間も、わたしたちはお手伝いできるけど、ここから先は椎名さんしか出来ない作業。お話したり、お酒をのんだり、土を掘ったりしてるときとは、また違った表情をしていてかっこよかったです。



2012/09/25

展覧会のつくり方〜その1(9/25)

展覧会が始まったところで、少し時間をさかのぼって、この展覧会ができるまでをご紹介します。
この展覧会は、主に三つの要素でできていて、そのうちの一つが「こどもたちによる土ねんど作品展」です。明倫小学校の一角をスタジオにしていた椎名さんが「いつもこどもたちが僕の作品をみてくれているので、今度は僕がこどもたちの作品をみてみたい」との一声から動き出したプロジェクトです。

校長先生に相談してみると、お忙しい時期にもかかわらず、快く受け入れてくれました。校長先生の中でも陶芸そのものや工程をこどもたちが「体験する」ことに、共感を得てくれたようです。

土ねんどは学校の教材から用意し、椎名さんは全学年のクラスを訪ね、彫刻や土ねんどづくりの技術のレクチャーをしました。紙粘土と違って、土ねんどだからこその難しさ、そのテクニックを伝えます。



そのあと、地元の陶芸作家(赤瓦十一号館陶芸館)の協力によって、電気釜で焼いた後、NPOのスタッフに『野焼き』を行い、完成しました。
  
 
会場に運ばれてきたときには、足がとれていたり、顔がなくなったりしましたが、サポートスタッフによってほとんどの作品の姿カタチが復元されました。復元作業はまるで、考古学者の気分。「このカタチはしっぽにみえるけど、実は土の向きや手つきを考えると耳だったりする」 とかいって、椎名さんはパズルみたいに分析していました。


こうして出来た150個近いこどもたちの作品が展覧会に並んでいます。足や手、頭などの部品はないものもありますが、それは壊れていて一見失敗という風に見えますが、そういうわけではありません。椎名さんはこどもたちや先生に向けて朝礼のときにお話しました。「みんなの作った作品は、焼いたことによってところどころの部品がなくなっていたりするけれど、昔の彫刻も同じようにこわれていても、ない部品をあるものとして、美術館や博物館で大事に価値のあるものとして残されている。こわれていても彫刻作品の美しさは変わらない。だから、お家の人にもそう伝えてください。」


私たちは、壊れてしまったり欠けてしまうと、失敗と思ったりある基準に比べて価値がないように思いがちですが、そうではない。ないものをみる視点を教えてくれた彫刻家らしい、メッセージでした。